<2005.5.21>晴れ  待ち受けたもの

このreportに関する」画像は ぎゃらりぃ]に有ります


おかしぃ 路へと出る手掛りがもう見付かってもいい頃だ?  圧縮閉鎖されて行く谷底から逃れ貼り付いた
斜面は 樹齢数百年経たと思われる巨木が犇めき太古の風情を漂わせて居る  手付かずの原生林は
徐々に斜度を増し辺りの植生も変わり出して来た いょいょルートファインディングを慎重に進めないと・・・。


あわよくば 四駆車で奥まで詰めれるかとの目論見は 立ちはだかるゲートに脆く崩れた 標高1100b地点
恒例の車外宴会は 吹き降ろしの冷たい風に今いち盛り上がらない ぐだ々と夜明をこのまま迎えて行くのか。
ゲートから先は 良く踏み込まれた林道で奥へ々と伸びて行く 此れを進めばその昔 多くの時間を要しての
山越えでしか立つ事が叶わなかった世界も 私の前に広がる筈だった・・・・。

当初目的の最奥地に比べ この辺は切れ込みが強く落差の激しさが 地図上等高線の圧縮度で読み取れる
落石を気にしながら心許無いガレ場を数百b下降 あと僅かで ストンと落ち込むルンゼ状の滝頭を 左手の
藪内に逃げ 最後は泥付きを滑り落ち川原へと出た 『スケールのでかい渓だぁ・・・。』 家屋程の巨岩が幾重
にも積み重なったゴーロで その上を攀じ登り先は滑り落ちたりの連続 とにかく上流を目指した・・・・。
流水は極限まで澄み渡り太い 馬鹿でかいポイントの底石ひとつ々さえ 手に取れる様見通せる とても持参の
三間の餌竿では何もさせて貰えないだろう 巨岩が折り重なり形成された滝を 僅か戻り左岸の小潅木を頼りに
高巻きで越える 苔が貼り付いた岩は浮き石が多く実に不安定だ しかもそのひとつ々が大きく 組み合った
間などに落ちればおそらく無傷では済まないだろう・・・ 乗り越す先はゴルジュを形成 落差は小さいが水量の
多い滝を抱え 大きな壷は行く手を阻む・・・。  人手による渓魚放流など考えられないこの辺り やはり魚は
少ない様だが 時折流れを切る影は尺を越えている 歯の立たない餌釣りを諦め この壷の主を見極めんが為
しつこくルアーで誘うが ついに最後までその姿を現す事は無かった。

このゴルジュを越すには 左岸切り立つ岩盤の100b上を大きくトラバース 最後は幾らかの懸垂で降りれば
問題は無いが しかし上流部は前日から林道を辿り泊りがけでの入渓組も予測出来る 迷ったが人の気配が
濃く成り出すだろう上流を捨て下流向け釣り下る・・・・  徐々に流れは太く落差は増して行く 何か側溝を流れ
滑り落ち 暗渠へとでも落ちていく気分だ    このまま下り続ければ何時か 身動き出来ない地点へと出る
事は確信していた?  渓の側壁は荒々しく剥き出しで 益々粗暴な素顔を見せ始める 『やはり!』 両岸の
岩盤が競りたち圧縮される廊下帯だ! 泳ぎの突破も選択には有るが このまま下れば 段々人間社会へと
戻る道が閉ざされ 未知の迷路へ沈んで行くかのような不安を覚えた もう何時か二人共竿は納め 魚影確認
へと感心は移って居たが ここまでのルートを戻り下降地点を林道向け這い上がる事も考えてはみた 尾根筋
には 巡視l路というか尾根道らしきものの存在は確認してある?   渓水に削られ台地となった10bばかりを
よじ登り そのまま体力任せの登りと成った しかし何と人の痕跡が感じられない場所だ 苔むした空間は人の
生業から追いやられ隔離された空気を澱ませ重く この行く先出来事を何か暗示してるかの様だ   我々には
他にこの息苦しさから逃れる術は見当たらなかった 『えええぃ ままよ』 降りた場所と比べれば 今のこの
位置 随分低く成って居るのだろう?  対岸のピークは1900b弱 此方側は随分低いとは云え 厳しく辛い
作業が待ち構える しかし行かねばなるめぃ。


向かいの山並が手も届かん距離で望め出す いくら低いだろうとは云え既に二時間は登り続けて居る 足元から
スパッと切れ込む痩せ尾根へと立ち 背伸びして現在地の確認をする  一段と斜度はキツクなり トラバース
補助ロープでの確保が多く成って来た もし足を踏み外せば いったい何処まで落ちて行くのか 想像さえも
出来ない  先の見えない苦行は時として目指すものを見失わせる 後続の釣友の気力維持が不安と成った?
・・大丈夫!・・ 疲れては居る様だが歴戦の猛者 多くの修羅場を見て来た目は澱んでは居ない しかと前を
見据えている  しかしいったい何処まで続くこの斜面 いつか三時間にもなろうとしている? 小休止の間隔も
しだいに短く成った様だ 残り少ない水分を一口含んで辺りを見回す    気がつくと其処は石楠花の群生地で
濃い目のピンクが気を紛らし新たな気力を生み出す 此処までそんな情景さえも気がつかなかった  ひたすら
人の気配が残る場所へと身体をずり上げ ふと目に入った尾根先のピーク!   まてよ?ならば今の我々は
何時か林道の高度はクリァした筈?? 『えっええっ?』 言葉に成らない思いを飲み込み 不安を打ち払う様に
がむしゃらに藪を掻き分け頂き目指す  何やらこのまま日本列島の背骨まで登り続けるのかと 脱水気味の
朦朧としだした頭を駆け巡る・・・・・・。

『あったぁ!』 人の手による枝払いの痕跡 『よおしっ!』 勢い付き一気に 穏かになりつつある表情の藪を
駈けた 伐採跡に踏み跡 段々明確に成る人の気配 ふと気がつくと 尾根道だろうしっかりした踏み跡へ出た
緊張から解放された安堵感より 己の甘さを恥じ噛み締めながら どっとへたり込んだ。

                                                            oozeki